デジタル人材育成支援事業と職業訓練は何が違うか?【給付金有無】

2023-07-24

デジタル人材支援事業と職業訓練の違い

東京都が手掛ける、「デジタル人材育成支援事業(デジカレTOKYO)」をご存じでしょうか?

・職業訓練とデジタル人材育成支援事業の違い

・給付金が貰えるかどうか

・どちらがおススメか

この記事では、このような観点からデジタル人材育成支援事業と職業訓練を比較します。

どちらも基本無料で利用できる、公的なエンジニア転職支援事業です。

これから未経験でエンジニア転職を目指す方は、なるべくお金をかけずに賢いやり方で転職に成功しましょう

運営事業者

デジタル人材育成支援事業は、「Adecco」が東京都から受託して運営する、公的なIT転職支援事業です。

Adeccoとは、世界的な人材サービス企業「アデコグループ」の日本ブランド。

主に若年層に対する、ITスキルの職業訓練と再就職支援を実施しています。

これにより以下の事が実現されるとしています。

デジタル人材育成支援事業が実現出来ること
  • 豊富な設備と機器を使いながらトレーニングを実施することができる。
  • 培ってきた研修ノウハウにより、即戦力となるデジタル人材の育成が可能。
  • キャリアカウンセリングなどにより、将来を見据えたキャリア開発のサポートを実施。
  • 企業に対するヒアリングにて人材ニーズや事業課題を把握し、それに基づくマッチングを行う。

なお公式Twitter質問箱が開設されているので、もし疑問点があれば確認できます。

概要の比較

デジタル人材育成支援事業はまだ始まって間もない新規事業。

一方ハローワークの職業訓練はずっと以前からエンジニア転職支援を行っています。

一見同じように見えても、よく調べてみると実は細かいところで違うもの。

まずは各々の概要を比較しました。

比較項目

デジタル人材育成支援事業

運営主体・財源

東京都産業労働局 

雇用就業部能力開発課

訓練情報のURL https://digital-tokyo.metro.tokyo.lg.jp
事務・窓口 Adecco

参加費用

無料

※テキスト代金等の教材も完全に無料

訓練対象者の

主な受講条件

  • 35歳以下
  • IT関連業務の経験がない方または少ない方
  • 求職中または非正規雇用で就業中
  • 都内のIT関連業界への正社員就職希望
  • 在学中の方は応募不可

比較項目

ハローワークの職業訓練

運営主体・財源

厚生労働省

東京労働局

訓練情報のURL https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kyushokusha-kunren/itaku/plan/index.html
事務・窓口 ハローワーク

参加費用

無料

※テキスト代金等の教材は自己負担

訓練対象者の

主な受講条件

  • 明確な年齢制限はなし。(訓練コース次第)
  • 受講開始日において離職者であること。
  • ハローワークに求職申込をしていること。
  • 公共職業安定所長の受講指示、受講推薦又は支援指示を受けられること。
  • 受講開始日から遡って1年以内に公共職業訓練又は、求職者支援訓練の実践コースを受講していないこと。

運営主体

運営主体は東京都と厚生労働省という点で違います。

ハローワークの職業訓練は雇用保険事業との結びついており、各種優遇措置があります。

一方、 デジタル人材育成支援事業は東京都の民間企業に対する委託事業。ハローワークの職業訓練のような優遇措置は有りません。

受講要件

受講場所については、 ハローワークの職業訓練は地方在住でも全国の主要都市で受講することが可能

一方 デジタル人材育成支援事業 は首都圏在住の方のみが受講対象となる点には要注意です。

参加費用についてはどちらも無料ですが、ハローワークの職業訓練ではテキスト代のみ自己負担です

ただし、精々1万円前後でおさまる範囲です。

例えば、ネットワークエンジニア向けのコースなら、以下のようなテキストを購入して使います。

「CCNA」というネットワーク技術を問う資格試験の対策本であり、ネットワークエンジニアなら誰でも知っている必携の1冊です。

また、サーバーエンジニア向けのコースなら、 以下のようなテキストを購入して使います。

「LPIC」というLinux技術を問う資格試験の対策本です。

ただし、Linuxは実際にサーバーの仮想環境を操作しながら覚えた方がいいかもしれません。

なお、PCやネットワーク機器は訓練校から無料で貸し出されるので、新たに購入する必要はありません。

受講条件は年齢制限が大きく異なります。

デジタル人材育成支援事業は若年層の就職支援がコンセプトであり、35歳以下が条件です。

もし36歳以上なら、ハローワークの職業訓練が選択肢となります。

受講時間帯については、どちらも平日日中に受講することになります。

基本的に失業中や求職中の方のみが対象で、働きながら受講することはできません。

よって、もし現在の仕事を続けながらエンジニア転職の取り組みたい方は、独学で勉強して下さい。

独学で資格が取れるなら、貴方の能力や意欲を明快にアピールできるからです。

採用選考や面接で評価される資格は以下の記事にまとめています。

給付金の内容

以下の表で支給される各種給付金を比較しました。

比較項目

デジタル人材育成

支援事業

ハローワークの

職業訓練

各種手当の有無

受講手当・通所手当・寄宿手当

無し

有り

失業手当の

給付制限期間免除

(自己都合退職の場合)


無し

有り

失業手当の受給延長

無し

有り

職業訓練受講給付金受給

無し

有り

ご覧の通り、金銭的支援はハローワークの職業訓練が充実しています。

よって、貯金に余裕が無い場合は、職業訓練を選ぶのが正解です。

訓練内容の比較

続いてデジタル人材育成支援事業とハローワークの職業訓練の訓練内容と実施要項を比較します。

比較項目

デジタル人材育成支援事業

訓練期間

  • プログラミングコース:2か月
  • ITインフラコース:2か月
  • アプリケーション開発コース:3ヶ月
  • ITインフラ・クラウドコース:3ヶ月
訓練の実施機関 Adecco(Modis VSN
職業紹介・就職支援 Adecco
面接選考 有り
応募状況 応募者はそれなりに多く、少なくとも定員割れはしていない。

在職中に応募した場合

合否発表タイミング

訓練開始日から、約10日前に合否が発表される。

つまり、在職中に受講を思い立って応募しても、退職日の1か月前までに合格を確定させることは難しい。つまり、現時点で失業者向けの制度。

比較項目

ハローワークの職業訓練

訓練期間

研修科目により3ヶ月、または6カ月

訓練の実施機関

民間の委託先教育機関

職業紹介・就職支援 ハローワーク・訓練校
面接選考 有り
応募状況

科目により人気の差がある。Python・AWS・AIなどは倍率が高く、2~3倍になる事も。ネットワーク・サーバー構築は、高くても倍率1倍程度なので狙い目。

在職中に応募した場合

合否発表タイミング

訓練開始日から、概ね1~2週間前に合格通知が郵送で届く。つまり、在職中に受講を思い立って応募しても、退職日の1か月前までに合格を確定させることは難しい。つまり、現時点で失業者向けの制度。

訓練期間

デジタル人材育成支援事業の訓練期間は2か月と3カ月に分かれます。

ハローワークの職業訓練の期間は3ヶ月か6カ月の2種類です。

様々な民間の委託先教育機関から、プログラミング、ネットワーク、サーバー、フロントエンド等のコースが開講されています。

最短でエンジニア転職を目指したい方は、デジタル人材育成支援事業の2か月コースが有力な選択肢です。

職業紹介と就職支援

デジタル人材育成支援事業の就職支援は、人材サービス大手のAdeccoから支援を受けることになります。

ハローワークと違って、エンジニアに特化した案件を多数取り揃えている強みがあるので、未経験エンジニア向け案件が見つけやすいです。

公式ツイートによれば、2021年度は研修生の7割以上が就職できています。

研修期間を過ぎてもフォローしてもらえるのは心強いですね

ハローワークの就職支援は、ハローワークと通っている訓練校が対応します。

主に訓練校のキャリアコンサルタントとやり取りすることになり、応募書類の書き方や面接の指導などのキャリアカウンセリングが受けられます。

とても熱心で優秀な人に担当してもらえるケースもあれば、いまいち相性が良くない人に当たる可能性もあります。

あまり過度な期待はせずに、自力で仕事を探し出す積極さが求められます。

選考と応募倍率

ここで1つ気を付けたいのが、どちらも希望者が全員受講できるとは限らないということ。

各コースの募集人数を超えた場合は、書類や面接による選考があります。

特にハローワークの職業訓練は、一部のコースに応募が集中するため慎重に選ぶべきです。

近年人気の「Python」や「AWS」や「AI」のコースは非常に倍率が高いです。

一方で、「ネットワーク」や「サーバー」を学ぶ「インフラエンジニア」養成コースは、比較的倍率が低いので狙い目です。

在職中に応募~選考が可能か?

「今は仕事をしているが、もし何らかのコースの応募して選考が通ったら受講したい。」とお考えの方も中にはいるでしょう。

しかし生憎ながら、仕事を続けたまま訓練受講を確定させることは現実的に困難です。

なぜなら、どちらも訓練開始日の2週間程度前にならないと、合否通知が届かないからです。

一般に退職の申し出は、退職日の1か月前と規定されているケースがほとんど。

よって、「訓練受講が決まってから、慌てて2週間後の退職を切り出す。」といった不義理な行為は許されません。

要するに、どちらの訓練も既に退職済みで求職中の方が対象となります。

メリットとデメリット

デジタル人材育成支援事業とハローワークの職業訓練のメリットとデメリットを比較します。

デジタル人材育成支援事業のメリット
  • 窓口も職業紹介もAdeccoが一貫して行うため、手続きがシンプル。
  • ハローワークとAdeccoの紹介案件を比べると、Adeccoの方が案件が多く未経験向けも豊富。
  • 各コースの開講間隔が短く、受講するチャンスが多い。
  • 訓練期間は2~3ヶ月で、短期間で就職したいニーズに応えられる。
  • 研修施設が充実している。
  • テキスト代等も含めて完全に無料。

デジタル人材育成支援事業のデメリット
  • 36歳以上は受講できない。
  • 受講手当、通所手当、寄宿手当が受給できない。
  • 3ヶ月の給付制限期間が無くならない。
  • 失業給付の延長措置もない。
  • 職業訓練受講給付金(月10万円)の受給対象とならない。(求職者支援制度)

判断材料がいくつもあるので、迷ってしまいますよね?

そこで、それぞれのおすすめタイプを分類しました。

デジタル人材育成支援事業向きの人

デジタル人材育成支援事業は、35歳以下で早くエンジニアになりたい方におすすめします。

デジタル人材育成支援事業は、35歳以下までが対象という年齢制限があります。

また、訓練期間が最短コースで2か月なので一刻も早いエンジニア転職を目指したい方向けです。

なおデジタル人材育成支援事業は、雇用保険受給資格者であるかどうかは考慮されていません。

例えばハローワークの職業訓練と違って、受講手当等や失業手当に関する優遇措置はありません。

それらを受け取る資格があるのは雇用保険受給資格者に限られるからです。

※ただし、失業手当を受給しながらデジタル人材育成支援事業を受講することは可能です。

アルバイトしながら受講する方もいるので、ある程度貯金があるなどで生活に余裕ある人向けであります。

研修面では、未経験エンジニアの育成に定評があるModis VSNによる、充実の設備や教育ノウハウに優位性がありそうです。

人材サービス大手のAdeccoによる就職支援も心強いですね。

なお訓練施設が東京の天王洲なので、毎日の通学が可能な首都圏にお住まいの方に限られます。

職業訓練向きの人

ハローワークの職業訓練は、雇用保険受給資格者、または36歳以上の方におすすめします。

雇用保険受給資格者は、失業給付が受け取ることができます。

雇用保険受給資格者にとって、ハローワークの職業訓練には以下のメリットがあります。

  • 受講手当、通所手当、寄宿手当が受給できる。
  • 自己都合退職でも、3ヶ月の給付制限期間無しで失業給付が受け取れる。
  • 失業給付の延長措置がある。

「自己都合退職した際の3ヶ月の給付制限期間」の間は、通常であれば無収入となってしまいます。

一方、ハローワークの職業訓練を受講する場合は、給付制限期間を待つことなく失業給付が貰えます。

これは金銭的に不安な失業者にとっては大きなメリット。

それまで地道に雇用保険料を支払ってきた以上、いざ失業となった時はその恩恵を是非享受しましょう。

無収入で経済的に不安定な状態で動こうとしても、なかなかモチベーションが上がりません。

また、ハローワークから委託された民間の教育機関では、多数のエンジニアを未経験から育ててきた実績があります。

ネットワークやサーバーを取り扱うインフラエンジニアの需要は、このコロナ不況下での転職市場でも底堅いです。

特に、30代から40代でIT実務未経験からエンジニア転職を狙う方におすすめします。詳しくは以下の記事をご覧ください。

まとめ

この記事では、東京都のデジタル人材育成支援事業とハローワークの職業訓練を選ぶ際のポイントをまとめました。

念願叶ってITエンジニアになれたら、その後の努力次第で年収は一気に上がります。

デジタル人材育成支援事業とハローワークの職業訓練は、その第一歩になります。

今後のキャリアプランを大きく左右する選択なので、後悔の無いよう慎重にご検討ください。

なお本記事に関するご質問やご意見等は、下記のコメント欄かTwitterのDMをご利用ください。