5G通信と4G LTE通信は何が違うのか?【図解】
- 5Gと4Gの違いがよく分からない。
- そもそも4Gの仕組みもよく分かってない。
- 5Gについて最低限の知識を押さえておきたい。
本記事では、5Gと4G LTEの仕組みを図解を使ってまとめました。
携帯電話同士の通信の仕組み
基礎知識として、携帯電話同士の通信の仕組みを以下にまとめました。
- 発信者がスマホで発信操作し、最寄りの無線基地局と通信を開始。
- 無線基地局から着信者の電話番号をノードビル(参考wiki:NTTドコモ川崎ビル)に送信。
- RNC(無線ネットワーク制御装置)が通信情報を制御し、発信側加入者交換機に送信。
- 発信側加入者交換機が、HLR(ホームメモリー)に発信相手の電話番号を問い合わせ、発信相手の携帯電話の居場所を検索。(参考記事:ホームメモリについて)
- 発信側加入者交換機が、発信側中継交換機に情報を送信。
- 発信側中継交換機が、着信側中継交換機に情報を送信。
- 着信側加入者交換機が、着信側中継交換機に情報を送信。
- 着信側中継交換機が、担当する位置登録エリア内の全ての無線基地局を経由し、着信者の携帯電話を一斉に呼び出す。(参考記事:加入者交換機による端末の呼び出し(ページング))
- RNC(無線ネットワーク制御装置)が、複数ある通信経路の中から、どの経路を着信側携帯電話と無線基地局の間で使用するかを決定。
- 着信者が居る場所の無線基地局までの接続が完了し、発信者と着信者の間で通信が開始。
携帯電話のインターネット通信の仕組み
次に、携帯電話がインターネット通信をする際の基本的な仕組みをまとめました。
- 発信者がスマホでインターネットを利用し、最寄りの無線基地局と通信を開始。
- 無線基地局からノードビルにパケットデータを送信。
- RNC(無線ネットワーク制御装置)が通信情報を制御し、加入者パケット交換機に送信。
- 加入者パケット交換機が、中継パケット交換機にデータを送信。
- 中継パケット交換機が、ゲートウェイにデータを送信。
- ゲートウェイを経由してインターネットに接続。
4G LTE通信
1G~4Gの変遷
「4G」とは「4th Generation」の略称。
携帯電話の通信規格「第4世代移動通信システム」を指します。
第1~2世代は携帯電話の普及がまだ途上段階でした。
ほとんどの方が携帯電話を持っておらず、馴染みが無いでしょう。
第3世代は「W-CDMA方式」や「CDMA2000方式」として展開。
一時期はテレビCMで盛んにCDMAを売り文句にしていました。
2012年頃から、第4世代の4G LTEが始動。
現在は5Gが普及段階で、通信設備増強など大規模投資が進行中。
通信各社は、ハイペースで増設工事に取り組んでいます。
一方、5G設備が全国に行き渡るにはまだいくつかのハードルもあります。
そのため、4G LTE通信も当面5Gと並行して使われ続けます。
LTEの仕組み
「LTE」とは「Long-Term Evolution」の略称です。
LTEは特定の通信方式というよりも、高速化のためのモバイル通信技術の総称として使われています。
当時の先端技術をうまく組み合わせ、高速で低遅延なモバイル通信を実現してきました。
例えば、旧世代の3Gの下り最高通信速度は14Mbpsですが、4G LTEでは100Mbpsと大幅に向上しました。
結果として4G LTEは、ビデオ通話、動画投稿サイト、動画のモバイルストリーミング配信などの普及を一気に後押ししました。
2010年代前半といえば、ガラケーからスマホへの過渡期。
携帯電話のwebコンテンツのデータ量は飛躍的にに増加しました。
それに伴い、無線通信に必要とされる通信速度も高速化が必須だったわけです。
この頃からスマホでyoutubeを見たりゲームが本格化。
高品質なwebコンテンツは、LTEを構成する次の3つの技術によって成立しています。
4G LTEの3つの技術
- OFDM:データを多重化し、より多くのデータをより高速に通信する。
- スケジューリング:ユーザー単位で通信状況を把握し、回線の利用効率を最適化する。
- MIMO:基地局と携帯端末の双方で複数のアンテナを設け、通信速度を上げる。
OFDM
OFDMは日本語に直訳すると「直交周波数分割多重方式」です。
正式名称は「Orthogonal Frequency Division Multiplexing」です。
簡単に言うと、OFDMは周波数を多重化する技術です。
電波利用の効率化手段の1つが周波数の多重化することで、1度に多くのデータがやり取りできます。
しかし、何も意識せずに周波数を多重化すると、お互いに干渉してデータの送受信が邪魔されます。
OFDMでは周波数の重ね方を工夫することにより、 多重化による電波干渉のリスクを緩和することができます。
OFDMのメリットは主に以下の2点です。
- 複数の搬送波を利用することで、遅延波に対する耐性が高い
- パケット通信の制御がしやすい
スケジューリング
簡単言うと、スケジューリングは基地局がパケットを整理する技術です。
各ユーザーの通信パケットを適切に整理してコントロールすることで、効率よく回線を利用できます。
携帯端末は電波の周波数単位で受信品質を測定し、基地局に対してフィードバック。
その品質情報はCQI(Channel Quality Indicator)と呼ばれます。
基地局は複数の携帯端末から通知されたCQI情報を基に、周波数ブロックを各ユーザーの状況に応じて最適に割当て。
その結果、ユーザーは安定的に高速な通信が可能となります。
MIMO
MIMOは基地局とユーザー端末の双方で複数のアンテナを用いることで、通信品質を向上させる技術です。
正式名称は「multiple-input and multiple-output」です。
かつては、通常1本の通信経路で複数のデータを同時に送信すると、データ同士が干渉して通信品質が下がることが課題となっていました。
現在ではMIMOの技術を用いて、複数の仮想的な通信経路を形成することで解決しています。
MIMO技術によって、より多くの無線電波の通り道ができます。
この通り道にて通信すれば、データ同士の干渉を防ぎながら複数のデータを同時に送信が可能。
結果としてより短時間での送受信が可能となり、高速な通信が実現しています。
5G通信
5Gとは、第5世代移動通信システム(5th Generation)の通称です。
前世代の4G LTEと比べて、次のような特徴があると言われています。
超高速・大容量
5Gでは通信の速度が4Gからさらに大きく向上します。
これまで大容量の動画やオンライン会議でPCやスマホが重くなったことは無いでしょうか?
5Gになれば、4Kや8Kの超高画質動画や大人数とのWebミーティングも、ノーストレスで快適になります。
超低遅延
5Gでは、通信に生じる遅延が極めて小さくなります。結果として、安定した高信頼性のネットワーク環境が実現されます。
例えば現在の製造業では、産業用ロボットによる生産自動化が普及しています。これを一般にFA(Factory Automation)言います。
不良品の発生を防ぐために、生産ラインでは一切のズレや歪みが許されません。そこで、FAの制御に対しては超低遅延の5Gの通信が、非常に効果的な技術的向上となります。
工場やオフィス内での、社内専用の5G通信環境を一般に「ローカル5G」と言います。
ローカル5Gの利用には公的な手続きや免許申請が必要なので、導入のハードルはやや高め。
ローカル5Gの環境構築が難しいケースでは、より導入しやすい「Wi-Fi6」なども選択肢となります。
多数同時接続
5Gでは、多数の機器による同時接続が可能となります。いわゆるIoTがいよいよ本格的に普及段階になると見込まれています。
例えば自動運転の分野では、多数の自動運転車が同時にネットワークに常時接続できる環境が求められます。
5Gならば都市部の交通量が多い道路環境でも、通信が途切れることなく安心安全な自動運転にさらに近づきます。
5G通信の3要件
eMBB
eMBBは、「拡張モバイルブロードバンド :Enhanced Mobile BroadBand」です。
既存の4G技術を拡張させることで、さらに高速な通信速度を達成するための要件です。
「MIMO」を拡張させた「マッシブMIMO」により、端末側の送信用のアンテナ数が大幅に増加し、基地局側でも多くなると100超のアンテナが利用可能です。
「ビームフォーミング」という電波送信技術も組み合わせ、基地局間の電波干渉を減らしながら通信を高速化します。
4G LTEではドコモが提供する「PREMIUM 4G」が下り最大1.7Gbpsですが、5Gでは下り最大20Gbpsまで高速になります
URLLC
URLLCは超低遅延と高信頼性を満たすための要件です。
正式名称は「 Ultra-Reliable and Low Latency Communications」。
絶対にミスが許されない自動運転、工場自動化、遠隔手術などには必須要件です。
これにはMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)という技術が使われます。
MECとは、クラウド上の遠方のデータセンター内のサーバー処理を、ユーザーにとって物理的により近い場所で処理することで遅延を減らせる技術です。
エッジコンピューティングの一例としては、「AWSのCloudFront」、「Akamai」、「Cloudflare」等のCDNサービスが有名です。
mMTC
mMTCは大規模マシンタイプ通信のことで、多数同時接続を実現するための要件です。
正式名称は「Massive Machine Type Communications」です。
4G LTEでは、端末が基地局と通信する際には事前に基地局からの許可を取得する手続きがありました。
この「許可」をグラントと呼びます。
5Gで用いる「Grant Free」は事前のグラント取得手続きを省略して、端末がすぐにデータを送信できます。
この効率化により、短時間で多数のデータ送信が可能となります。
「NOMA」は、「Non- Orthogonal Multiple Access 」の略称で「非直交多元接続」のことです。
まず「MA」とは、多元接続のことです。複数の電波を用いるモバイル機器が、通信帯域を分け合ってデータを送受信することです。
これまでのMAは直交多元接続という方法が使われ、ユーザー間での電波干渉は発生しないようになっていました。
NOMAでは直交性を敢えて非直行性とすることで、同じスペースで多数の端末を接続させることができます。
より詳しい仕組みは、以下の「国立研究開発法人情報通信研究機構:NICT」のサイトをご覧ください。
まとめ
この記事では、 4Gと5Gの違いについて解説しました。
普段当たり前の様に使っているスマホ。
その利便性や高機能は、色んな技術の結集によって成り立っています。
是非モバイル通信の基本知識を今後に活用してください。